英語の受動態と能動態は、ただ形を変えるだけの関係ではありません。
同じ出来事を表していても、
「誰を主役にするか」
「何をいちばん伝えたいか」
によって、自然な文は変わります。
学校では「受動態=受け身」として形を覚えることが多いですが、実際にはそれだけでは足りません。
英語では、受動態を使うべき場面と、能動態にしたほうが自然な場面があります。
この記事では、受動態 / 能動態の違いをやさしく整理したうえで、
- 受け身を使うべき場面
- 能動態のほうが自然な場面
- 不自然な英文の直し方
- 迷ったときの判断基準
まで、初心者にもわかるようにまとめて解説します。
受動態 / 能動態の違いをまず整理する
能動態は「誰がするか」を前に出す形
能動態は、主語が動作をする形です。
例文
I wrote this email.
私はこのメールを書いた。
この文では、主語の I が動作主です。
「誰が書いたのか」を前に出したいときに自然です。
能動態のよいところは、文が短く、はっきりしやすいことです。
日常会話や、わかりやすさを優先した文章では、能動態がよく使われます。
受動態は「何がされるか」を前に出す形
受動態は、主語が動作を受ける形です。
例文
This email was written by me.
このメールは私によって書かれた。
この文では、主語は this email です。
つまり、「誰がしたか」よりも「何が書かれたか」を前に出しています。
受動態は、単に能動態の裏返しではありません。
話の中心を、動作主から対象へ移す形だと考えるとわかりやすいです。
違いは「意味」より「焦点」にある
能動態と受動態は、出来事そのものはほぼ同じでも、読み手が最初に受け取る印象が変わります。
| 形 | 例文 | 伝わりやすい焦点 |
|---|---|---|
| 能動態 | James Cameron directed Avatar. | 誰がしたか |
| 受動態 | Avatar was directed by James Cameron. | 何がされたか |
この違いを一言で言うと、次のとおりです。
能動態 = 行為者を前に出す
受動態 = 行為・対象・結果を前に出す
ここを押さえると、受動態 / 能動態の使い分けが一気に楽になります。
受動態を使うべき場面
行為者がわからないとき
受動態が自然なのは、まず誰がその行動をしたのかわからないときです。
例文
My bike was stolen.
私の自転車が盗まれた。
この場合、言いたいのは「自転車が盗まれた」という事実です。
犯人がわからないなら、無理に Someone stole my bike. とする必要はありません。
むしろ受動態のほうが自然です。
行為者を言う必要がないとき
誰がしたかが明らかだったり、重要でなかったりする場合も、受動態がよく使われます。
例文
English is spoken in many countries.
英語は多くの国で話されています。
ここで大事なのは、「どの国で英語が使われているか」という情報です。
「誰が話しているか」は、特に言わなくてもわかります。
このように、行為者を省いても意味が十分通るとき、受動態はとても便利です。
対象や結果を主役にしたいとき
英語では、文頭に置いたものが話題の中心になりやすいです。
そのため、対象や結果を目立たせたいときに受動態が自然になります。
例文
The new product was released yesterday.
その新製品は昨日発売された。
この文で中心なのは「新製品」です。
企業名よりも、新製品そのものを話題にしたいなら受動態が合います。
同じ話題を続けたいとき
文章では、前の文と次の文のつながりが大切です。
すでに話題になっているものを主語に置き続けたいとき、受動態が役立ちます。
例文
This building was designed in the 1920s. It was renovated last year.
この建物は1920年代に設計され、昨年改修された。
ここで Architects designed this building… のように能動態にすると、話題が「この建物」から「建築家」に移ってしまいます。
建物の説明を続けたいなら、受動態のほうが流れが自然です。
かたい説明文・報告文・科学的な文で客観的にしたいとき
受動態は、報告や説明、科学的な文体でもよく使われます。
例文
The samples were tested under controlled conditions.
試料は管理された条件下で検査された。
このタイプの文章では、「誰がやったか」よりも、
何が、どのように行われたかが重要です。
そのため、日常会話よりも、説明文・報告文・学術寄りの文で受動態が出やすくなります。
責任や断定をやわらげたいとき
受動態は、言い方を少しやわらげたいときにも使われます。
例文
A mistake was made.
ミスがありました。
これを You made a mistake. と言うと、相手を強く指す言い方になります。
一方、受動態にすると、責任の向きをぼかしつつ事実を伝える感じになります。
ただし、この使い方は便利な反面、曖昧に聞こえることもあるので、いつでも正解というわけではありません。
能動態のほうが自然な場面
誰がしたかをはっきり伝えたいとき
行為者が重要なら、能動態のほうが自然です。
例文
My brother fixed the computer.
兄がそのパソコンを直した。
この文で知りたいのは「誰が直したのか」です。
受動態にして The computer was fixed by my brother. とすると、やや説明的で重くなります。
会話で短く言いたいとき
日常会話では、能動態のほうがすっきりしやすいです。
例文
I sent the file.
ファイルを送りました。
受動態にして The file was sent by me. と言うと、会話ではかなり不自然です。
日本語でも「そのファイルは私によって送られました」と言うと、少しかたい印象になるのと同じです。
by 句が重いとき
受動態にすると、by + 人 をつけたくなる場面があります。
でも、その結果、文が重くなることは少なくありません。
例文
The door was opened by John.
そのドアはジョンによって開けられた。
文法的には正しいですが、普通の会話なら
John opened the door.
のほうが自然です。
「受動態にできる」ことと「受動態にしたほうが自然」なことは別だと覚えておきましょう。
受動態が続いて読みにくくなるとき
受動態を続けすぎると、文章がぼんやりしやすくなります。
たとえば、
The meeting was scheduled, and the documents were prepared, and the plan was explained…
のような文が続くと、
「結局、誰が何をしたのか」が見えにくくなります。
読みやすさを優先するなら、どこかで能動態に戻したほうがよいことが多いです。
受動態の作り方と能動態からの言い換え
基本形は be + 過去分詞
受動態の基本はとてもシンプルです。
主語 + be動詞 + 過去分詞
例文
The window was broken.
窓が割られた。
be動詞の部分だけが時制に合わせて変わり、
過去分詞は基本的にそのままです。
by は必要なときだけ使う
受動態というと by をすぐ思い浮かべる人が多いですが、
実際には by + 行為者 を書かないこともよくあります。
例文
My flight was cancelled.
私の便は欠航になった。
この文では、航空会社名をあえて出さなくても意味が通ります。
だから by は不要です。
by をつけるのは、行為者が重要なときだけで大丈夫です。
時制は be動詞を変えて表す
受動態では、時制の中心は be動詞 側にあります。
| 時制 | 形 | 例文 |
|---|---|---|
| 現在形 | am/is/are + 過去分詞 | English is spoken here. |
| 過去形 | was/were + 過去分詞 | The room was cleaned. |
| 現在進行形 | am/is/are being + 過去分詞 | The hall is being painted. |
| 現在完了形 | has/have been + 過去分詞 | The work has been finished. |
| 未来 | will be + 過去分詞 | The package will be delivered tomorrow. |
形だけでなく、どの時制が自然かも大事です。
受動態は作れても、実際にはあまり使われない形もあります。
この点は後で詳しく説明します。
助動詞の受動態もよく使う
助動詞があるときは、次の形です。
助動詞 + be + 過去分詞
例文
This problem must be solved.
この問題は解決されなければならない。
例文
The report can be submitted online.
その報告書はオンラインで提出できます。
仕事や学校の英語ではかなりよく出る形なので、早めに慣れておくと便利です。
目的語が2つある文は、2通りの受動態がある
たとえば give のように、人 + もの の2つを目的語にとる動詞では、受動態にする形が2つあります。
能動態
Her mother gave each child a present.
彼女の母は子どもたちにプレゼントをあげた。
受動態
Each child was given a present.
それぞれの子どもはプレゼントを与えられた。
受動態
A present was given to each child.
プレゼントがそれぞれの子どもに与えられた。
どちらも文法的に可能ですが、ふつうは人を主語にしたほうが自然なことが多いです。
句動詞も受動態にできる
句動詞も受動態にできます。
例文
The meeting was called off.
会議は中止された。
例文
He was looked after by his grandmother.
彼は祖母に世話をされた。
句動詞は前置詞や副詞まで含めて1つのかたまりとして覚えると、受動態でも混乱しにくくなります。
不自然な受動態を自然に言い換えるコツ
「誰がしたか」が大事なら能動態に戻す
まず見直したいのは、本当に受動態にする必要があるかです。
不自然になりやすい文
The homework was finished by me.
自然な言い換え
I finished the homework.
英作文では「受動態が作れるから使う」のではなく、
その文で主役にしたいものは何かを考えることが大切です。
長くて重い受動態は主語を人にすると読みやすい
不自然になりやすい文
The proposal was carefully examined by our team during the meeting.
より自然な言い換え
Our team carefully examined the proposal during the meeting.
主語を人に戻すと、文が引き締まりやすくなります。
特に会話やメールでは、能動態のほうが読みやすいことが多いです。
形式的すぎる受動態は会話向きに直す
たとえば次の文は、文法的には正しくても少しかたく聞こえます。
The window was broken by Tom.
→ Tom broke the window.
The announcement was made by the teacher.
→ The teacher made the announcement.
日常的な場面では、受動態を能動態に戻すだけで自然になることが少なくありません。
get を使う受動態もある
会話では get + 過去分詞 も使われます。
例文
My bike got stolen.
私の自転車が盗まれた。
例文
He got hurt in the accident.
彼はその事故でけがをした。
be動詞の受動態より、少し口語的で出来事感が強いことがあります。
ただし、まずは基本の be + 過去分詞 をしっかり押さえるのが先です。
受動態でつまずきやすいポイント
自動詞は基本的に受動態にできない
受動態は、基本的に目的語をとる動詞で作ります。
そのため、自動詞はそのままでは受動態にできません。
不自然な例
The parcel was arrived.
自然な形
The parcel arrived.
「到着する」のように、もともと目的語をとらない動詞は、受動態にしないのが基本です。
状態を表す動詞や linking verbs は受動態にしにくい
be, become, seem のような linking verb は、受動態にしません。
例文
She became a doctor.
彼女は医者になった。
これは
- A doctor was become by her.
のようにはできません。
「受動態にできるかどうか」は、意味だけでなく動詞の性質にも左右されます。
完了進行形の受動態は不自然になりやすい
文法上は作れる形でも、実際にはかなり不自然なものがあります。
例
The house has been being renovated for almost a year.
文法的な説明としては見かけても、実際にはかなり重いです。
ふつうは次のように能動態に言い換えたほうが自然です。
They have been renovating the house for almost a year.
彼らはその家をほぼ1年間改修してきた。
作れる形 = 自然に使う形ではない、という良い例です。
「by をつければ完成」ではない
受動態の練習では、どうしても「by をつける」ことに意識が向きます。
でも、実際の英語では by を省く受動態 がとても多いです。
例文
The store was closed.
店は閉まっていた。
ここで「誰によって閉められたか」は重要ではありません。
だから、by がなくても十分自然です。
受動態 / 能動態の違いがわかる例文まとめ
日常会話での違い
| 言い方 | 自然さ | ニュアンス |
|---|---|---|
| I lost my key. | 自然 | 自分が鍵をなくしたことを言う |
| My key was lost. | 場面による | 鍵のほうに焦点がある |
| Tom broke the vase. | 自然 | 誰が壊したかを言う |
| The vase was broken by Tom. | やや説明的 | 花びん側を主役にする |
ニュース・報告での違い
| 言い方 | 自然さ | ニュアンス |
|---|---|---|
| Someone stole my bike. | やや不自然 | 犯人不明なのに someone が前に出る |
| My bike was stolen. | とても自然 | 被害と結果を伝える |
| The company released the product yesterday. | 自然 | 会社を主語にしたいとき |
| The product was released yesterday. | とても自然 | 製品そのものを話題にしたいとき |
学校・仕事で使いやすい受動態
- The report was submitted this morning.
報告書は今朝提出されました。 - The data was collected from 200 students.
データは200人の学生から集められました。 - The meeting was called off.
会議は中止されました。 - This issue must be discussed again.
この問題は再度議論されなければなりません。
これらは、誰がやったかより、処理・結果・対象が大事な文です。
そのため、受動態が自然です。
迷ったときのチェックリスト
受動態にするか、能動態にするかで迷ったら、次の順番で考えると判断しやすくなります。
1 誰を主役にしたいか
- 行為者を主役にしたい → 能動態
- 対象や結果を主役にしたい → 受動態
これがいちばん基本です。
2 行為者は必要か
- 誰がしたかを言う必要がある → 能動態が有力
- 誰がしたかは不明・不要・言いたくない → 受動態が有力
3 能動態のほうが短く自然にならないか
受動態が長くなったときは、一度能動態に戻してみてください。
たとえば
The email was sent by me.
より
I sent the email.
のほうが自然です。
4 その文は会話か、説明文か
- 会話・カジュアルな英文 → 能動態が中心
- 説明文・報告文・科学的な文 → 受動態もよく使う
文法だけでなく、文体との相性も大切です。
まとめ
受動態 / 能動態の違いは、単純に「する」「される」の違いだけではありません。
ポイントは、何を主役にするかです。
能動態が向いている場面
- 誰がしたかをはっきり言いたい
- 会話で短く自然に言いたい
- 文を引き締めたい
受動態が向いている場面
- 行為者が不明
- 行為者が重要でない
- 対象・結果・処理を前に出したい
- 報告文や説明文で客観的に言いたい
迷ったら、まずは次の一問で考えてみてください。
この文で、いちばん目立たせたいのは「誰」か、それとも「何」か。
この判断ができるようになると、受動態と能動態は暗記ではなく、自然に選べる表現になっていきます。
最後に、覚えておきたいコツを一つだけ挙げるなら、これです。
「作れる受動態」より「自然な受動態」を選ぶ。
これを意識するだけで、英語はかなり読みやすく、伝わりやすくなります。
