英語の this / that / it は、どれも日本語では「これ・それ・あれ」と訳されやすいため、混乱しやすいポイントです。
ですが、丸暗記しようとすると逆に迷います。
大切なのは、単語の訳ではなく、話し手の感覚でつかむことです。
この記事では、初心者でも迷いにくいように、
this / that / it の違いを「距離感・共有度・文脈」の3つで整理します。
読み終わるころには、
「何となく」ではなく、なぜその語を選ぶのかが見えてきます。
this / that / it の違いをひとことで言うと
まずは結論から整理しましょう。
| 語 | 基本イメージ | こんなときに使う |
|---|---|---|
| this | 自分の近くに引き寄せる | 近くの物、今の話題、これから示す内容 |
| that | 少し距離を置いて指す | 遠くの物、相手の発言、少し離れて捉える内容 |
| it | すでに分かっているものを受ける | 一度出た名詞、状況、時間、天気など |
この表だけでもかなり整理できます。
特に大事なのは、
this と that は「指して見せる感覚」が強く、
it は「すでに共有されているものを受ける感覚」が強いことです。
this は「今ここにあるもの」を感じさせる語
this は、話し手が「これ」と近くに引き寄せて示すときに使います。
たとえば、手元のペンを持ちながら言うならこちらです。
- This is my pen.
- I like this bag.
- What is this?
この this には、
物理的に近い という感覚がまずあります。
ただし、this の「近さ」は物理的な距離だけではありません。
今の話題に近い、気持ちの上で近い、これから言うことに注意を向ける ときにも使えます。
たとえば、
- This is what I want to say.
- Listen to this.
のように言うと、
「今からこれを見て」「この内容に注目して」という感覚になります。
this は前向きに引き寄せる感じが出やすい
this は、話し手が対象を自分の側に寄せて見せる語です。
そのため、親しみ・関心・前向きさがにじむことがあります。
たとえば、
- I love this song.
- This idea could work.
のように言うと、
単に指しているだけでなく、自分の意識の中心に置いている感じが出ます。
that は「少し離して指す」語
that は、話し手から見て遠いものや、少し距離を置いて捉えるものを指します。
たとえば、
- What is that?
- That building is our school.
- Can you see that star?
このように、目に見える物を「あれ」と指すのが基本です。
ただ、that は 遠い物だけ に使うわけではありません。
英語では、話し手が少し距離を置いて捉えているものにも that を使います。
たとえば、相手が何か言ったあとに、
- That’s a good idea.
- That’s interesting.
- Why is that?
と言えます。
ここでの that は、物を指しているのではなく、
相手が今言った内容全体を受けています。
that は「聞き手寄り」の感覚になることもある
that は、話し手から遠いだけでなく、
聞き手の近くにあるものを指すこともあります。
たとえば、相手の近くにある物に向かって
- Could you pass me that book?
と言うことがあります。
つまり、that は単純に「遠い」ではなく、
話し手の手元ではないものという感覚で捉えると理解しやすくなります。
it は「もう分かっているもの」を受ける語
it は this や that と同じように見えて、感覚はかなり違います。
it は、何かを新しく「これ」「あれ」と示すというより、
すでに話題に出たもの、すでに分かっているものを受ける語です。
たとえば、
- I bought a new phone. It is very easy to use.
- Where is my key? I can’t find it.
- I saw a movie yesterday. It was great.
この it は、前に出てきた
- a new phone
- my key
- a movie
を受けています。
つまり、初登場の物をいきなり it で出すのは基本的に不自然です。
まず対象を示し、そのあとで it に受け渡すイメージです。
it は「指す」より「受ける」
ここが最大の違いです。
- this / that = 今、その場で指して見せる
- it = すでに分かっているものを受ける
この違いが分かると、使い分けがかなり楽になります。
this / that / it を見分ける3つの判断軸
迷ったときは、次の3つで考えると整理しやすいです。
1. その場で指しているか
今その場で「これ」「あれ」と示しているなら、まず this / that を考えます。
- What is this?
- What is that?
一方で、すでに何のことか分かっているなら it が候補です。
- What is it?
2. 相手と共有できているか
相手がまだ対象を知らないなら、
まず this / that で示すことが多くなります。
相手も自分も「何のことか分かっている」なら、
it が自然になりやすいです。
3. 指しているのが名詞か、内容全体か
it は、一つの名詞やはっきりした対象を受けるのが基本です。
一方で that は、相手の発言や前の文の内容全体を受けやすい語です。
ここが、that と it の大きな分かれ目です。
What is this? / What is that? / What is it? の違い
この3つは、初心者が特に混乱しやすい表現です。
What is this?
話し手の近くにあるものを見て、
「これは何?」とたずねる形です。
たとえば、手元の機械や目の前の料理を指して言います。
What is that?
少し離れたものを見て、
「あれは何?」とたずねる形です。
指差しながら使う場面をイメージすると分かりやすいです。
What is it?
これは「それって何?」と訳されることもありますが、
感覚としては 何を指しているか、すでにある程度共有されている ときに使います。
たとえば、
- There’s something in the box. What is it?
のように、箱の中に「何かある」と分かっている場合です。
つまり、
- まだ対象を示す段階 → this / that
- 対象は分かっていて中身を聞く段階 → it
と考えると整理できます。
that と it で迷ったら「指す範囲」を見る
that と it がややこしいのは、どちらも日本語では「それ」と訳されることが多いからです。
ですが、英語では 指している範囲 が違います。
it は「一つのもの」を受けやすい
- I found my wallet, but I lost it again.
この it は my wallet を受けています。
that は「相手の発言・考え・内容全体」を受けやすい
- I’m moving to Osaka next month.
That’s exciting.
この that は、単語一つではなく、
「来月大阪へ引っ越す」という内容全体を受けています。
この違いを意識すると、会話でかなり自然になります。
this と that は気持ちの距離も表せる
this と that は、物理的な近さ・遠さだけではありません。
心理的な距離 が出ることもあります。
たとえば、親しみや好意を込めて
- I love this café.
- This little app is really useful.
と言うと、自分の感覚に近いものとして扱っています。
逆に、少し距離を取りたいときは that が合いやすいことがあります。
- I don’t like that attitude.
- What are you going to do about that problem?
この感覚が分かると、
this と that は単なる「これ・あれ」ではなく、
話し手のスタンスまで映す語だと分かってきます。
it は時間・天気・状況でもよく使う
it には、もう一つ大事な使い方があります。
それが、時間・天気・日付・状況を言う it です。
たとえば、
- It’s five o’clock.
- It’s raining.
- It’s cold today.
- It was nice to meet you.
この it は、何か特定の物を指しているわけではありません。
英語では文に主語が必要なので、こうした場面で it がよく使われます。
そのため、this / that / it の違いを学ぶときは、
it には「それ」という意味だけではない と知っておくことが大切です。
よくある間違い
ここでは、学習者がつまずきやすい点をまとめます。
初めて出すものなのに it を使う
たとえば、目の前の見慣れない物を指して
- × What is it?
と言うと、やや不自然になることがあります。
まだ対象が共有されていないなら、
- What is this?
- What is that?
のほうが自然です。
this と that を距離だけで決める
距離は大事ですが、それだけでは足りません。
実際には、
- 相手の発言を受ける
- 気持ちの距離を出す
- 話題を近くに感じる
といった要素でも使い分けます。
日本語の「これ・それ・あれ」に一対一で当てはめる
日本語と英語では、指示語の切り方が完全には同じではありません。
日本語の感覚だけで
- これ = this
- それ = it
- あれ = that
と固定すると、かえって混乱します。
英語では、
「指しているか」「共有されているか」「文全体を受けるか」
で考えるほうがうまくいきます。
迷わないための覚え方
覚え方は、次のようにするとシンプルです。
this = これを見て
話し手が対象を自分の近くに置いて見せる感じです。
that = それ・あれの話ね
少し離して捉える感じです。
相手の発言を受けるときにも使いやすい語です。
it = もう分かってるそれ
一度出たもの、共有済みのもの、時間や天気などを受ける語です。
この3つを丸ごと覚えるだけでも、かなり使いやすくなります。
すぐ使える例文で感覚を固める
以下の3組を見比べると、違いがつかみやすくなります。
目の前の物を指すとき
- This is my cup.
- That is your cup.
- It is dirty.
最初に this / that で対象を示し、
そのあとで it で受けています。
相手の発言に反応するとき
- I got the job.
- That’s great!
ここは it より that が自然です。
相手が言った内容全体を受けているからです。
時間や天気を言うとき
- It’s sunny today.
- It’s almost noon.
ここは this や that ではなく、it が基本です。
練習問題
次の空欄に this / that / it を入れてみてください。
1
A: What is _?
B: It’s my new watch.
(話し手の手元にある時計を指している)
答え:this
2
A: I’m going to quit my job.
B: _ sounds like a big decision.
答え:That
3
I bought a laptop yesterday. _ is very light.
答え:It
4
_ is raining again today.
答え:It
5
Can you move _ chair near the window?
(聞き手の近くにある椅子)
答え:that
まとめ
this / that / it の違いを、最後にもう一度整理します。
- this は、話し手が近くに引き寄せて示す語
- that は、少し距離を置いて示す語
- it は、すでに分かっているものを受ける語
そして、使い分けのコツは次の3つです。
- 今その場で指しているなら this / that
- 一度出たものを受けるなら it
- 相手の発言や内容全体を受けるなら that になりやすい
この感覚が身につくと、英語の指示語は一気に使いやすくなります。
日本語訳に引っぱられすぎず、
「話し手は今、対象を見せているのか、受けているのか」
という視点で考えてみてください。
それだけで、this / that / it の迷いはかなり減ります。
